保育士は可愛い子供達と毎日一緒に過ごし、日々の成長が見られるとあって人気の高い仕事です。ただし実際に働き始めると、理想と現実のギャップに悩まされる人も少なくありません。仕事を辞めたいと転職まで決意する理由は人によって様々ですが、特に保育士同士で起こり得るいじめの問題が深刻です。この記事ではいじめの実例やいじめが起こりやすい保育園の特徴、そしていじめにあった際の対処法などについて紹介していきます。
保育士のいじめの実例
保育士のいじめの実例としては、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
陰口・嫌味
職場で起こるいじめの代表的な行為が陰口や嫌味です。陰口は基本的にその場に居ない人が標的になるものですが、いじめは相手を不快な気持ちにさせたいという思惑があるため、近くに居るのを知っていながら敢えて聞こえるように悪口を言います。また嫌味はおっとりとした優しい性格の人や新人がターゲットになるケースが多く、仕事の段取りが悪かったりミスをすると、「あの人は使えない」といった言葉で個人攻撃します。
無視
陰口・嫌味とともにいじめの代表例となるのが無視です。挨拶をしても無視、仕事の件で質問しても無視、まるで存在していないかのように扱われる行為です。無視が厄介なのは仕事にも関連するためで、必要事項を教えて貰えない結果、子供や保護者にまで迷惑をかける可能性があります。
嫌がらせ
嫌がらせも色々な方法がありますが、精神的に追い詰められるのが、保育士としての立場を無くすような態度を取られる事です。例えば一生懸命に手遊びや読み聞かせをしている中で、これ見よがしに園児に「楽しくないね」など話しかけたりする保育士がいます。基本的に保育士の仕事は同僚同士、協力しあって成り立つもので、周りから足を引っ張られるようでは自信を無くしていきます。
仕事を自分にばかり振ってくる
保育士の仕事も色々ですが、中には職員からあまり人気の無い仕事があります。例えば散歩カートの片付けやトイレ掃除などで、順番に回していくなら問題ありません。しかし一人の保育士ばかりに皆が嫌がる仕事を押し付けるのはいじめと認定出来ます。
パワハラ
上司や先輩保育士など、立場が上の保育士から受ける陰湿ないじめはパワハラとなります。保護者からクレームの電話があった時に、状況も聞かずに叱りつける、また子供の保育中にミスをした際、子供の前でも怒鳴りつけるといった言動です。立場の違いから反論も許されず、当事者は我慢するしかありません。
差別
雇用形態や性別などもいじめの要因となります。保育士は正社員以外にパートやアルバイト、派遣といった働き方がありますが、同じ雇用形態の仲間が多いほど力を持ちます。例えば正社員の数が多く、パートが少なければ、正社員の保育士がパ―トの保育士をターゲットに差別行為を行います。さらに保育士は女性社会であり、男性保育士は稀な存在です。園児達から人気がある保育士は、嫉妬や妬みから少しのミスでも「だから男性保育士は使えない」といった暴言を吐く保育士もいます。
性格や人間性の批判
性格や人間性は持って生まれたもので、成人になった大人が簡単に変えられるものでもありません。しかし考え方が違うから、仕事のテンポが合わないからといった理由で、「だからあなたはダメなの」と人間性そのものを否定するような言葉を言い放つ人がいます。周りに咎める人がおらず、その意見に皆が同調するようでは、集団いじめと認識されてもおかしくありません。
退職させない
人間関係などの悩みから退職を決意しても、なかなか辞めさせてくれないケースがあります。退職を考えた事をことごとく責め立て、「絶対に退職させない」と半ば脅すように退職を諦めさせるのは、当事者にとっては強いストレスとなり、さらに職場へ行くのが億劫になってしまいます。
なんでも否定する
良かれと思っていた事を何でも否定してくる人がいます。他の同僚にも同じような態度であれば性格的な問題と片付けられますが、1人をターゲットにして全否定するのは、いじめと断定出来る言動です。ターゲットとなり集中攻撃を受ける保育士は、否定される度に嫌な思いをし、ストレスを溜め込むことになります。
ニュースにもなるいじめが起こりやすい保育園の特徴
時に保育園のいじめ問題がニュースになることがありますが、ニュースで取り上げられるほど深刻な問題を起こす保育園とはどのような特徴があるのでしょうか。
派閥がある
保育園は女性社会ですが、女性が多く集まると出来やすいのが派閥です。同じ派閥に属する者同士ずっと固まっており、属していない保育士は冷たい態度を取られます。皆が派閥に属する訳ではなく、自ら入ろうとしなかった人や派閥に入れなかった人は職場の中で孤立し、いじめへと発展するのです。
不要な仕事が多く余裕のない職場
保育の仕事だけではなく、雑務も多くこなさなければいけない職場はいじめが横行しやすい傾向にあります。人は忙しく時間が無いと心に余裕がなくなり、他人の些細なミスも許せなくなります。大人しくて何も言い返せないような保育士はいじめの標的になりやすく、ストレスのはけ口とされてしまうのです。
園長の感情の起伏が激しい
保育園の中で絶対的な立場となるのが園長です。温和な園長であれば、落ち着いて仕事に集中出来ますが、感情の起伏が激しい園長なら、激高する度に保育士はビクビクしなければいけません。心休まらない状態が続けばストレスも溜まり、ストレス発散のために誰か一人をターゲットにして、いじめが始まってしまいます。
プライドの高い人が役職にいる
プライドの高い人は、自分より出来る相手に良い感情を持ちません。役職の立場にいる人の中にもプライドが高い人はおり、よく出来る部下に対しては自分の方が優れていると強い敵対意識を持ちます。良い意見も即却下、間違った情報を伝えて失敗させるなど、部下を仕事が出来ない人材に仕立て上げようと操作します。周りの人間も様々なメリットを考慮し、立場が上の人間に肩入れするため、自然と職場全体でターゲットを追い込む構図が出来ていきます。
慣例に固執し変化を嫌う
新人保育士、また中途採用で入った保育士は、保育園に新しい風を吹き込むかもしれません。斬新なアイデアを提案し、より良い保育園にしようと試みるのですが、慣例に固執し変化を嫌う人は、どれだけ良い提案であっても同調しません。自分達のやり方が否定されているような気分になり、間違った方向で団結して、いじめへと矛先を向けていきます。
本部が何もしないまたは改善しない
いじめの火種がまだ小さい間なら、本部が当事者を呼びだし、話し合いの場を設ける事で火種が消える可能性があります。しかし本部が見て見ぬふり、何も行動を起こさず状況を改善させようとしなければ、いじめの火種はどんどん大きくなります。いじめに加担する保育士の数が増えていくと、よりいじめの内容も陰湿なものへとなっていくかもしれません。
他人の心配より自分のことが優先
保育士の仕事は、同僚と協力し合わなければ上手くいきません。自分が困っている時に助けて貰う、相手が困っている時に自分が助ける関係性があれば、気持ち良く仕事も出来るものです。しかし他人よりまずは自分が大事という意識が強い人は、辛い状況になっている人を見ても手を差し伸べません。むしろ自分より立場が弱い人間がいることに安心し、いじめのターゲットを作って自分の立場を安泰にさせようとするのです。
ポジティブよりネガティブな思考が蔓延している
ポジティブな思考を持っている人は、何でも良い方に考えます。一方ネガティブな思考を持っている人は劣等感が強く、何でもかんでも後ろ向きに考えます。例えば少し目が合っただけで「睨んだ」と感じ、その瞬間に嫌われていると思い込んでしまうのです。職場全体にネガティブ思考が蔓延すれば人間関係も上手くいくはずがなく、いじめも横行しやすくなります。
いじめの対処法
保育士として働いている中で、もしいじめの被害に遭った時はどう対処していけば良いのでしょうか。
上の役職の人に相談する
信頼できる上司がいるなら、まず上司にいじめの事実を報告し、相談しても良いかもしれません。告げ口のようで後ろめたく感じるかもしれませんが、そもそも上司は部下を守る立場であり、相談した事を相手側に知られないよう上手く解決してくれます。仕事がし辛くなっている状況を理解して貰えると、精神的にも楽になります。
職場で仲間を作る
いじめは精神的に辛い状況に追い込まれるものですが、こんな時に誰か愚痴を言える人がいれば、少しは気持ちも和らぎます。ストレスを発散するには職場外の人でも良いですが、辛い立場を分かって貰うには職場の同僚が最適です。腹を割って話してみると、実は自分と同じような経験をしてきた人もいるかもしれません。また職場に味方となってくれる存在がいるのは心強く感じます。
あったことをメモする、録音する
いじめの事実を上司や同僚、家族、または外部機関に相談する場合、いずれにしても証拠を残しておくと自分にとって有利になります。「いつどこで、誰にどんなことをされたのか」についてメモしておけば、後日思い返す際にも便利で確実です。また言葉の暴力が激しい場合はICレコーダーが有効で、いじめの証拠として突き出した時は相手に反論の余地を与えません。
外部の人に相談する
周りに相談する人がいなければ、外部の人に相談するという方法があります。いじめ問題に精通しており、最も良い解決策を導き出してくれます。また顔も知らない相手だけに、心の中にくすぶっているモヤモヤも全て吐き出す事ができ、相談した後はスッキリした気分にもなります。
退職・転職する
いじめてきた相手と仲良くなることは簡単ではありません。優しい言葉をかけられたとしても、相手の過去の言動がフラッシュバックしてくる可能性もあります。同じ職場で働けないと思うなら、思い切って退職・転職するという方法もあります。可愛い子供達と離れるのは寂しいですが、活躍出来る場所は他にもたくさんあり、同じ所に固執する必要はありません。
いじめには自分を守ることが最優先
いじめを受けている人が避けなければいけないのは、我慢しすぎることです。責任感が強い人は、たかがいじめで休む訳にはいかないと、無理して出勤する傾向にあります。しかし心の方は負担が重くのしかかっており、我慢し続けた結果、うつ病など精神的な病を発症する可能性が出てきます。まずは自分を守ることを最優先させ、後の事は気持ちが落ち着いてからゆっくり考えていけば良いのです。
保育士として働くならいじめのない健全な職場を選ぼう
保育士が念願の夢だった人は、いじめで多少嫌な思いをしても我慢してしまうかもしれません。しかしいじめが横行している職場は決して良い環境ではなく、我慢を続けた結果、保育士の仕事自体を嫌いになる可能性もあります。「石の上にも三年」という言葉がありますが、理不尽な扱いを受けて耐える必要はありません。自分にとって最良で働きやすい職場はどこかにあるため、早い段階で見切りをつけるのが賢明です。