子どもができたら、保育園か幼稚園への入園を考えるのは、当然と言えるでしょう。しかし、保育園と幼稚園の違いを明確に知っている人は多くありません。ましてや、自宅から通わせる範囲内で、どの保育園や幼稚園が我が子に適しているのか判断することは容易ではないでしょう。本記事では、保育園と幼稚園の違いや特徴について、詳しく説明します。
保育園と幼稚園の比較
保育園と幼稚園は、似ている点もあれば、異なる点もあります。どちらもメリットとデメリットがあるので、一概に優劣を決めることはできません。活動内容や費用も千差万別と言えるでしょう。我が子がどちらに向いているかは、個別具体的に検討することが必要です。
目的
保育園の目的は、出産後すぐに復職を求める母親や、体が弱く家庭で長時間の子育てが難しい親をサポートすることです。ただし、単に既定の保育時間に時間を潰せばよいわけではなく、子どもの健全な心身の成長を目指し、養護と教育を一体的に行う役割を担っています。これに対して、幼稚園は、満3歳以上の児童に、共同生活という環境下の体験を通じて園児の主体性と自立性を育てることを目的にしています。
対象年齢
保育園の対象年齢は0歳から小学校入学前までです。一方、幼稚園は3歳から小学校入学前までの児童を預かります。したがって、0歳から2歳までは保育園しか預けられませんが、0歳児のうち保育園預けられている児童は全体の1割程度にとどまり、1歳になると約3割に増え、2歳で4割ほどに上がります。幼稚園に預けられる年齢に達した3歳児は、保育園児と幼稚園児の占める割合がどちらも4割強とほぼ変わりません。4歳児や5歳児になると、次第に保育園児に比べて幼稚園児が増え、5割を超えてきます。2歳までは保育園に通わせ、3歳になると幼稚園に転園するケースも珍しくありません。いずれにせよ、未就学児の大半は幼稚園か保育園のどちらかに預けられていると言えるでしょう。
標準保育時間
保育園の標準保育時間は、午前8時から午後6時半までの時間帯のうち、約8時間となっています。早番の保育士が午前7時半から預かる保育園もあります。保育園は仕事などの事情で子どもを預けざるを得ない家庭の子どもを預かるため、保育時間が長くなっているのです。これに対して、幼稚園の標準保育時間は、9時から午後2時までの時間帯のうち4時間程度と言えるでしょう。ただし、習い事を行っている幼稚園では、夕方まで児童を預かることもあります。保育園は通年で平日開園しており、日曜休日以外は預けられますが、幼稚園は日曜休日が休園となるほか、夏休みなどの長期休みにも休園することが原則とされています。
料金
2019年10月1日を開始日として、幼児教育・保育の無償化が実施されました。そこで、3歳以上の未就学児が通う幼稚園児は全て無償となり、これに合わせて保育園の3歳以上の園児も保育料が無償となっています。つまり、保育園に3歳未満の園児を預ける親は保育料を支払わなければなりません。とはいっても、3歳未満の園児の場合、保育料は一律同額ではなく、世帯収入によって差が設けられています。この場合の保育料は、自治体によって異なるため、地元の行政機関に確認すると良いでしょう。
なお、住民税非課税世帯であれば、3歳未満の園児の場合も保育料を払う必要がありません。3歳以上の園児が無償とはいっても、保育園の延長保育については、3歳以上の園児にも保育料が発生します。それから、幼稚園は入園料がかかるという特徴もあります。このほかにも、送迎バスや習い事など、幼稚園で付加サービスを利用する場合は有料となるでしょう。
管理省庁・法律
保育園を管轄するのは厚生労働省で、幼稚園の管轄権を持つのは文部科学省です。保育園は児童福祉法に基づく児童福祉施設であり、幼稚園は教育基本法に従って運営されている教育施設です。
必要免許
保育園に正式職員として勤めるためには、保育士の資格が必要です。保育士の資格は、都道府県知事から指定された保育士養成学校などの教育施設で所定のカリキュラムを履修し卒業するか、または保育士の国家試験に合格することにより取得できます。ただし、保育士資格を取得しただけでは、保育現場で働くことはできません。資格を取得したら、都道府県知事に登録を申請して保育士登録を行うことが必要です。都道府県知事から保育士証の交付を受けてから、保育士として勤務できるのです。
幼稚園に勤務するためには、幼稚園教諭の資格が必要です。幼稚園教諭の免許は、1種・2種・専修の3種類があり、それぞれで待遇面や取得方法に差があります。こうした免許を取得した後、公立幼稚園なら公務員試験、私立幼稚園であれば採用試験を受験して合格しなければなりません。幼稚園教諭1種免許状は、幼稚園教諭養成課程があると文部科学省が認定した大学や、大学と同程度の教育を行う短期大学専攻科の卒業した者が取得できます。
幼稚園教諭二種免許状は、文部科学省が認定した短期大学・大学短期大学部の幼児教育科などのほか専門学校の卒業生が取得できる資格です。幼稚園教諭専修免許状は、幼稚園教諭養成課程があると文部科学省が認定した教育学研究科などの大学院修士課程を修了した者が取得できます。なお、取得した免許状の違いによって、現場の業務に差が出ることはありません。違いがあるとすれば、1種免許取得者の方が、2種免許取得者よりも高給を受け取れるなどの待遇面の違いと言えるでしょう。また、昇進上でも、幼稚園教諭の2種免許状では園長にはなれないといった違いがあるのです。
変わらない所
保育園と幼稚園は、どちらも就学前の児童を預かる点では変わりがありません。ひな祭りやこどもの日などの年中行事を楽しむ企画を実施する点も同じだと言えるでしょう。管轄省庁が異なるので、従来は保育園が託児を目的とし、幼稚園が教育を目的とするという違いがありました。しかし、2018年に幼稚園教育要領・保育所保育指針に加えて幼保連携型認定こども園教育・保育要領が改定され、保育園も幼児教育施設とみなされるようになりました。したがって、保育園と幼稚園のどちらに通っても、小学校初等教育の準備段階として幼児教育を受けられることになったのです。
入園見学スケジュール
入園先を決める前に、園の見学が欠かせません。秋以降は入園の申し込み時期が迫ってくるため、見学希望者が増えてきます。見学者が多いと断られるか延期を求められることもあるので、早めに申し込みましょう。冬季はインフルエンザなどの感染症が流行して見学しにくいというリスクがあります。また、幼稚園には保育園と異なり夏休みなどの長期の夏休みがあり、休園している時期は見学できません。保育園は、原則として通年で見学できますが、バラバラに見学に来られても対応に困るため、月に2回程度の見学の機会を設けてまとめて見学者を受け入れている所が多いです。
わざわざ園に赴く以上、通常の保育活動の現場を見なければ意味がありません。見学の時間帯は、午前中が好ましいでしょう。午後はお昼寝の時間にあてている園も多く、主な保育活動は午前中に行われることが少なくありません。園によって事情が異なるので、予約の電話をする際に、ベストの時期や時間帯を聞くことが必要です。
保育園の種類
保育園と一言で言っても、様々な種類があります。まず、認可保育園と無認可保育園の2つが挙げられるでしょう。認可保育園とは、都道府県知事に認可された児童福祉施設で、施設の広さや保育士等の職員数などの国の設置基準をクリアすることが条件となっています。認可保育園は、自治体が公募した団体を厳しい設置基準に沿って審査したうえで設立が認められるので、自由に設立することはできません。認可保育園は公費により運営されますが、区市町村により運営される公立保育園だけでなく、社会福祉法人などの民間団体が運営する私立保育園も含まれます。認可保育園は内容が充実しているため、入園希望者が多いものの、申請者要件が厳しく数が限られていて、入園できない児童も少なくありません。
認可保育園に似た名前の保育園として、認証保育園という無認可の児童施設もあります。認証保育園は、国の厳しい基準では十分な数の保育園を設置できない東京都が独自に定めた制度で、企業の参入を促進し保育ニーズを満たす新方式の保育園です。認証保育園には、駅前基本型と呼ばれるA型と小規模、家庭的保育所と言われるB型の2種類があります。認定こども園という幼稚園と保育園の複合型の施設もあります。認定こども園は両方の機能を併せ持ち、地域の子育て支援も行っています。
このほかに、地域型保育事業として、19人以下の少人数の園児にきめ細かい保育を施す小規模保育や、5人以下のアットホームな雰囲気の家庭的保育に加えて、企業の従業員の子どもを事業所内の施設で保育する事業所内保育と、保護者の自宅で1対1の保育を行う居宅訪問型保育の4種類の無認可保育事業があります。さらに、無認可施設にはベビーホテルなど様々な無認可施設があることも忘れてはいけません。
認可保育園
認可保育園は、公的機関が定めた厳しい設置基準をクリアし、助成金を交付される保育園のことです。認可をもらうためには、保育事業の実績が必要なため、先ず認可外保育園を設置して実績を積んでから、認可保育園への移行を目指すことが多いと言えるでしょう。
小規模認可保育園
子ども・子育て支援新制度の一環として始まった小規模認可保育園とは、認可外となっていた19名以下の小規模保育が、地域型保育事業として認可事業と認められた保育園です。小規模認可保育園であれば設立が容易で、長くとも5ヵ月くらいで開園できます。大都市の待機児童問題の解決方法として、小規模認可保育園は期待されていると言えるでしょう。認可されて補助金を受ける以上、国の基準に適合する職員配置が必要となり、利用料や入園者選考も自治体が基準を定めることになります。
事業所内保育園
事業所内保育園も、子ども・子育て支援新制度における地域型保育事業としてスタートしました。事業所内保育園は、事業所の従業員や近隣住民の子どもの保育を事業所内で行う保育園です。 20人以上の定員の場合は保育所型事業所内保育事業と言い、認可保育所と同じ運営基準が適用されます。20人未満なら小規模型事業所内保育事業と呼ばれ、小規模保育事業A型又はB型と同等の基準に沿って設立しなければなりません。 保育対象は、原則として0歳から3歳未満の児童だけで、3歳以上の児童は受け入れていません。利用料は自治体が決めますが、従業員の子どもの料金は自治体の設定した額を上限として各事業所の裁量に任されています。
認証保育園・認定保育園
認定保育園・認証保育園とは、認可外保育園の一種で、人口が多く待機児童問題が深刻な都市部などの自治体が独自の基準で認証・認定した保育施設をサポートする制度です。 認可保育園の基準ほど厳しくないものの、一定水準の保育環境は保たれていると言えるでしょう。認定・認証されれば、自治体から運営費助成金や利用者補助金などを受けられます。
企業主導型保育園
企業主導型保育園も認可外保育園の1つですが、内閣府認定保育事業として認可保育園と同等の助成金を交付されます。従業員の子どもの保育が主な目的ですが、地域住民も利用できます。24時間保育や一時預かり等が可能であるものの、認可保育所と同じくらいの厳しい設置基準に従わなければなりません。利用料は、既定の利用者負担額を参考に事業者が決定します。保育を委託せざるを得ない家庭状況であれば、入園希望者は直接保育施設へ申し込めます。
その他の認可外保育園
認可外保育施設には、託児所・保育室をはじめ、ベビーホテル・ベビールームなどいろいろな名称のものがあります。ベビーシッター要綱に基づく設置基準により運営される施設で、24時間保育や一時預かりといった独特の形態があることが特徴と言えるでしょう。認可保育園と比べると設置要件が緩く、比較的自由に設置できます。ただし、利用者補助金を交付する自治体はあるものの、原則として事業者に対する補助・助成金はありません。保育料は事業者が自由に設定でき、利用の申し込みは自治体ではなく直接保育施設へ行う必要があります。
こども園
認定こども園は、保育園・幼稚園どちらの機能も併せ持つ幼保連携型施設です。共働き世帯の増加により、幼稚園の利用者が減る中で、待機児童は増え続けてきました。そこで、既存施設を有効活用しながら待機児童を減らすために、幼稚園と保育園の併合施設である認定こども園を設立したのです。子ども園は内閣府が管轄していますが、厚生労働省と文部科学省も関与しています。子ども園に勤めるには、保育士か幼稚園教諭のいずれかの資格があれば十分で、両方の資格を持つ必要はありません。
保護者の就労とは無関係に入園でき、保育時間も長時間にわたることが特徴と言えるでしょう。子ども園には、保育所型・幼稚園型・幼保連携型に加え、地方裁量型の4種類があります。幼稚園型は、既存の幼稚園に保育園の機能が付加されており、保育園型は、既存の認可保育園に幼稚園の機能が加わったものです。幼保連携型は、幼稚園と保育園の両機能を併せ持つ併合型で、地方裁量型は、既存の認可外の幼稚園や保育園に認定こども園の機能が追加された施設です。
自分の子どもにあった園を見つける手順
自分の子どもに合った園を探すためには、まずネットや地域の情報誌で通園可能な園をピックアップしてから、HPの情報、口コミや投稿を確認します。わからないことがあれば行政機関に相談することが必要です。情報を集めたら、見学の予約をします。見学の際には、事前の情報をまとめて確認する内容を決めておきます。コロナが落ち着いたら可能な限り子どもも一緒に連れて行きましょう。子どもが受けた印象を聞くことも園を決定する際の重要な目線になります。園に通っている知り合いがいれば、評判を聞いておくことも欠かせません。見学を終えたら、費用や通園時間などあらゆる要素を総合考慮して結論を出しましょう。
自分の子どもにあった園を見つけるためのコツは優先順位
子どもを通わせる園を決める際には、費用といった大人の都合から子どもと園の相性という子どもの心情まで様々な要素を挙げておき、そのうちのどれを優先するか考えておかなければなりません。優先順位を決める際は夫婦で相談して決めます。また、一緒にどんな風に成長してほしいかを話し合いましょう。目標により優先順位は変わってきます。
待機児童が多い場所では入りたい保育園に入れるわけではありませんが、この保育園には子どもを入れたくないと思うような所は最初から希望に入れずに外しましょう。
認可保育園にこだわらず、保育園と幼稚園の情報を集めて最適の園を選ぼう!
認可保育園といっても園ごとに特徴がありそれぞれ違います。認可保育園だからいいかとあまり考えずに決めてしまうと後で後悔することになりかねません。認可保育園や認可外保育園、幼稚園という基準にとらわれず子どもに合った保育がされている所を探して入園することが大切です。